従来の印刷は、縮小せざるを得ないのか
不景気に強いと言われていた印刷業界ですが、今やそんな「神話」は影を潜め、不況のまっただ中にあると思います。
企業がチラシなどの販促費を抑えているし、地方の印刷会社にとって頼みの綱だった官公庁が、市町村合併で数が少なくなり、少ないパイを、限られた地域の中で奪い合っている状態になっています。
もちろん、WebやiPadなどのデジタル端末の台頭が、印刷市場を奪っている事実も見逃せません。
分厚い会社案内やパンフレットを大量部数印刷する会社は、中小企業では少なくなっています。
会社情報の詳細は、WEBに載っていますし、カタログなんかも、iPadに入れて営業するというスタイルも広がっています。
つまり、従来の印刷が生き残るには、非常に厳しい環境だということです。
かつて、キリスト教を全世界に広めたのは、聖書という「印刷物」のおかげでした。
情報伝達を効率よくするのに、最先端のツールが「印刷物」だったのです。
しかし、そうした「情報伝達」を「より多くの人に」行うツールとして、印刷物は主役ではなくなっています。
今の主役は、もちろん「web」です。
元に、大日本印刷、凸版印刷という2大企業でも、利益は印刷以外の事業で確保しているのが現状です。
大量に印刷して、大量に配布して・・・というビジネスモデルは、すでに崩壊しているのかもしれません。
オンデマンド印刷が切り開いた、新たな市場
しかし、印刷会社にとって光明もあります。
「オンデマンド印刷」というジャンルです。
従来のオフセット印刷ではなく、それこそ「1枚」「1部」でも印刷できる、この印刷方式は、今まで印刷会社が見向きもしなかったジャンルで、新たな顧客層を開拓できます。
オンデマンド印刷とは、手っ取り早く言えば、「すごく速く印刷できる、カラープリンタ」です。
仕組みは、カラーレーザープリンタと変わりありません。
品質はもちろん、良いですが。
さて、そのオンデマンド印刷が切り開いた市場とは、「個人」市場です。
今まで、個人が本を印刷しようと思っても、少ない部数ではとても費用が高く、手が出せませんでした。
10冊程度でいいのに、「10冊も100冊も、値段が変わりませんよ」と、印刷の営業マンに言われた経験を持っている人も、少なくないんじゃないかと思います。
従来の印刷は、「版」を作って大量に印刷するという方式だったので、1冊だけを印刷するとなると、非常に効率が悪く、びっくりするような値段になります。
「たった1冊が、10,000円以上もするの!?」
という世界です。
でも、オンデマンド印刷なら、版を作らなくてもいいので、1冊でも簡単に、しかもコストが安くできます。
こうしたことから、個人利用の印刷物では、オンデマンド印刷が主流になっているのです。
主なところでは、
- 年賀状や喪中はがきなどの挨拶状
- 名刺
- 封筒
- 企業が作る少部数のカタログ、パンフレット
- 個人やサークルが作る同人誌(漫画、詩集、句集、写真集など)
などが、そうです。
パソコンが普及し、個人が自分で印刷用データを作るのも、そんなに難しくない時代になっています。
インターネットで、印刷用データを印刷会社に出稿し、2日後には10冊の冊子が手元に届く。しかも安い。
スピードと少部数のコストでは、オンデマンド印刷が圧倒的に有利です。
これからの印刷ビジネスは、オンデマンド印刷が、お客様の細かなニーズを汲み取り、少部数・短納期で印刷物をお届けするというサービスを行う会社が、伸びていくのだと思います。
もちろん、チラシなどの大量部数印刷は、従来のオフセット印刷が生き残るでしょうが。